cygwin で w3m を使う
(2003/02/17) 渡邉勝之
knabe@sannet.ne.jp
Windows で w3m を動かすためには,Windows 上の UNIX互換環境である Cygwin が
必要です.
Cygwin に関する情報は http://cygwin.com/ を参照してください.
* ビルド
w3m-0.2 以降から cygwin 向けの修正パッチが取り込まれたため,cygwin-1.1.4
以降の環境であれば特に問題なくビルドできます.Net Release 前の B18, B19,
B20あたりでもビルドできるはずですが,確認はされていません.
(*) Cygwin B20.1 の環境では
LOCAL_LIBRARIES に -luser32 をつける必要があります。
なお,termcap ないし ncurses パッケージは最新のものを使ってください.特
に termcap を使う場合,古いパッケージは /etc/termcap の cygwin のエント
リにバグがあり,表示がおかしくなります.この問題は termcap-20001020-1 で
修正されているため,これ以降のバージョンを使用してください.
ビルドする際には, 必ず ./configure してから make してください.以下で説
明するマクロが定義されなくなるため,正常に動作しなくなります.また,正常
にビルドできない,正常に動作しない場合には,バグ報告をする前に以下の点を
チェックしてください.
o make veryclean してから再度 ./configure && make してみる.
o gcc, binutils が正常にインストールされているかを確認する.
cygwin の setup.exe に問題があり,パッケージファイルのダウンロード
に失敗しても,エラーの報告をしないで正常終了してしまうことがあるよ
うです.その場合には再度 setup をやりなおしてください.
また Win95/98/ME では,環境変数 CYGWIN に 'ntsec' もしくは 'ntea' が含ま
れていると,シェルスクリプトに実行属性がつかなくなるため,configure に失
敗するようです.w3m に限らず,他にも問題が発生するという報告があるため,
Win95/98/ME で Cygwin を使用する場合には,最初に cygwin1.dll をロードす
る際の環境変数 CYGWIN から ntsec, ntea の記述を取り除いてください.
* マクロ
config.h には,Cygwin 環境向けに以下のマクロを定義してあります.
o USE_BINMODE_STREAM
-dump, -dump_{head,source,both,extra} 時の stdout への出力をバイナリ
モードで行います.cygwin-1.3.11 以降では不要になっているはずですが,
安全側に振っておくために残しています.
Cygwin, EMX 環境で共通です.
o SUPPORT_DOS_DRIVE_PREFIX
'C:', 'C:/', 'file://C:/', 'file://C|/' などのドライブレターを含むパ
スを認識し,ファイル名として扱う機能を有効にします.
Cygwin, EMX 環境で共通です.
o SUPPORT_NETBIOS_SHARE
'//NETBIOSHOST/SHARE/PATH', 'file://NETBIOSHOST/SHARE/PATH' 形式の
NETBIOS 共有資源へのアクセスを ftp: スキーマではなく file: スキーマ
として扱う機能を有効にします.
Cygwin 環境に特有です.
o SUPPORT_WIN9X_CONSOLE_MBCS
Win9X 系の DOS プロンプトで,検索およびフォームへの一行エディタ入力
時に日本語 IME 経由の入力をサポートします.
ただし,Win9X 系の DOS プロンプトの実装および Cygwin の tty レイヤー
の問題により,ローカルコンソールで TERM=cygwin かつ環境変数 CYGWIN
に 'tty' が含まれない場合のみ IME からの入力を許可しています.
なお,NT 系ではこのマクロを無効にしても動作は変更されず,ローカルコ
ンソールであれば IME による日本語入力が可能です.
LANG=JA 指定時の Cygwin 環境に特有です.
* Native Application との連携
Cygwin 環境でビルドした w3m から Win32 Native アプリケーションを起動する
場合,パスの記述形式の違いによって,ファイルが見つからないなどのエラーが
発生します.
o ローカルCGI
Cygwin 環境でビルドすると,$LIB (通常は /usr/local/lib/w3m/cgi-bin) 以下
にインストールされるローカル CGI は cygwin の /usr/bin/perl を使うように
設定されます.これに対し,Native アプリケーションの ActivePerl などを使
用する場合,以下のようなラッパースクリプトを用意し,$LIB 以下の各スクリ
プトを修正してください.
------ /usr/local/bin/winperl ------
#!/bin/sh
# wrapper script for Win32 Native Perl
PERL=/cygdrive/c/Perl/bin/perl.exe
case $1 in
-*)
;;
*)
SCRIPT=`cygpath -w $1`
shift
;;
esac
exec "$PERL" "$SCRIPT" $@
------------------------------------
※PERL= には Cygwin 環境の内部から見た Native Perl のパスを記述してくだ
さい.cygpath ユーティリティは cygwin パッケージに入っています.
なお,ディレクトリリストだけであれば,オプション設定で「ディレクトリリス
トに外部コマンドを使う」を NO にすれば,ローカル CGI を使わずにディレク
トリのブラウズを行います.
o エディタ
w3m はテキストエリアの内容編集などに外部エディタを使用しますが,外部エデ
ィタに Win32 Native アプリケーションを使う場合,以下のスクリプトを外部エ
ディタに指定してください.
------ /usr/local/lib/w3m/winedit ------
#!/bin/sh
EDITOR='/cygdrive/c/Program Files/sakura/sakura.exe'
FILE=`cygpath -a -w $1`
exec "$EDITOR" "$FILE"
----------------------------------------
※EDITOR= には Cygwin 環境の内側から見た Native アプリケーションのパスを
記述してください.
なお,NT 系で inetd をサービスとして動かしていて,localhost に telnet で
接続している場合には,「デスクトップとの対話をサービスに許可」を ON にし
ておかなければ window が表示されません.
* 既知のバグ
以下は,Cygwin 環境で w3m を動かした場合の問題点です.
o -dump, -dump-source 時に LF -> CR+LF の変換が行われることがある.
コンパイル時にマクロ USE_BINMODE_STREAM が define されていない可能性が
あります.
きちんと configure したうえでコンパイルしなおすか,環境変数 CYGWIN に
binmode を設定してください.
o Win9X 系の DOS プロンプトで IME 経由の入力ができない.
環境変数 CYGWIN に 'tty' が含まれているときには,Cygwin の tty レイヤ
の問題を回避するために IME 経由の入力を禁止しています.環境変数 CYGWIN
から 'tty' を削除してください.
o Win9X 系の DOS プロンプトで IME が ON になっているとカーソルが効かない.
Win9X の DOS プロンプトと Cygwin の tty レイヤーの実装の問題です.
代わりに C-f, C-b, C-p, C-n を使ってください.
o NT 系のコマンドプロンプトで画面制御がおかしくなる.
「レイアウト」タブで画面バッファのサイズとウィンドウのサイズを違う値に
してバックスクロールができるように設定していると,画面制御がおかしくな
ることがあるようです.
o DOS プロンプト,コマンドプロンプトでマウスが使えない.
DOS プロンプト「編集オプション」/コマンドプロンプトの「オプション」で
「簡易編集モード」が ON になっていると,マウスイベントが w3m に渡され
ません.OFF に設定してください.
o DOS プロンプト,コマンドプロンプトでマウスボタンに対する反応がおかしい.
cygwin-1.3.15 までの環境では,マウスの右と中央ボタンのエスケープシー
ケンスが入れ替わっていました.これは cygwin-1.3.16-1 で修正されていま
すが,w3m 側のバージョン判定が完全ではないため,使用する環境でビルド
するようにしてください.
* その他
Cygwin 環境では,DOS プロンプト/コマンドプロンプトを使うよりも,inetd を
あげて,ローカルに TeraTerm, PuTTY などの telnet クライアント経由でログ
インする,ないしは rxvt, cygterm を使用するほうが快適です.
o rxvt:
rxvt on Cygwin
http://hp.vector.co.jp/authors/VA021953/rxvt/
compiled package
http://matsu-www.is.titech.ac.jp/~sohda/cygwin/dist/
o cygterm:
CygTerm - Yet another Cygwin console
http://www.dd.iij4u.or.jp/~nsym/cygwin/cygterm/